アイのカケラ

「この世界は汚れている」
君に教わった
 
「浄化するアイが必要だ」
君はそう言って、ガラスの小瓶に入った錠剤を差し出した
 
それは、小さな”アイのカケラ”
 
成分は、中心に微量に存在する”アイ”と、その周りを覆う多量の”イタミ”
 
僕は世界を浄化する為に立ち上がり、君に言われた通りに薬を飲み続けた
だけど、いつも途中で苦くなって吐き出してしまっていたんだ
“アイ”には辿り着けないまま、”イタミ”だけをを取り込んで
 
今思えば、あの薬にはもともと”アイ”なんて無かったのかもしれない
ただ、たくさんの”イタミ”を体内に取り込んで、それを消化して排出する過程で、
”愛”は確かに育まれていたのかもしれない
 
だけどね
僕にとって大切なのは、そんなことじゃなかったんだよ
 
僕は、その”イタミ”を消化することができなかった
排出することをためらってしまった…
 
君の言う通りに出来なかった僕は罪を背負った
汚れた世界を浄化することも出来ず
 
反射した光が視線をなめらかに横切り
ほとばしる赤い華が美しい
 
薄れ行くの意識の彼方で見たのは、かすかに笑みを浮かべた君
 
そして・・・消える
 
これで世界は、僕は、浄化される