色褪せていく世界

10年前、20年前、30年前、、、僕らが生まれる前もずっと。
きっと今日と同じような空と、太陽と、ざわめきがあったはずなんだ。

それが思い出せない。

過去は色褪せていくね。

音も、色も、匂いも、感触も、人の感情さえも、削ぎ落とされていく。

まるで過去は、いまより静かで、薄暗く、感情のない世界だったかのような錯覚。
ノスタルジーに悲しさとさびしさが伴うのはそういう理由。

過去は、いま思い出す世界よりも、ずっと賑やかで、明るくて、人間もまた活き活きとしていた。
だから悲しむ必要などない。

未来もまた同じように、ぼやけている。

良い未来を想像しても、悪い未来を想像しても、色褪せている。

きっと未来になったら、たとえそれが悪い未来だったとしても、いま想う未来より、ずっと賑やかで、明るくて、人間もまた活き活きとしているはず。

過去も未来も色褪せた世界。

いまが一番ビビッドだ。

hijiri